春の読書から時間が経ってしまいましたが、又吉直樹(ピース)さんの『火花』を読み終えました。170ページもない薄い本でしたがとても切れがある素晴らしい作品だったと思います。読み終えたばかりの今この瞬間一番心に響いているので個人的な勝手な感想を書きたいと思います。
※ネタバレはほとんどありませんが、本当に真っ新で楽しみたい方は記事を読まず、映画版をYouTubeやHPで検索せずササっと小説版を買って読むのが良いと思います!
※下記リンク『花火』は左が文庫版、右がKindle版です
目次
又吉直樹『火花』の感想
最初は文章が読みにくい感じがした
読むのに少し時間がかかった理由です。最初少し文章が固いというか、改行が少ないというか、ちょととっつきにくい文章だったので読みにくく感じて進みませんでした。
デビュー小説との事で慣れていったのか私が慣れたのかは分かりませんが、中盤からは逆にリズムが良くなった感じで読みやすくスラスラ読めました。
漫才師の世界を覗けた
又吉さんって風貌からしても、どちらかと言うとちょっと不器用で冷めた感じがしていましたが、全然こんな事を考えて漫才をやってる熱い人なんだなと思いました。
私は漫才師っていうか芸人さんって本当に凄いなと思っています。小説の中にもありましたが、話だけで皆を幸せに出来るってすごい能力ですよね。だけど一方で天才肌の人たちの凄さも垣間見えるので熱意だけでは通用しない実力主義の過酷な世界だなとも感じています。
イッテQみたいなロケ番組やバラエティ番組だと多少の差は隠せるけれど、トーク番組や内村さまぁ~ずのような瞬発的な発想力が必要とされる番組だと実力の差がありありと見えて見てる方も冷や冷やします。
内村さまぁ~ずで言えば、三村さんの瞬発力と爆発力が凄すぎて(最近は全盛期より低下してると思うけど)内村さんや大竹さんが霞む事もあります。3人とも天才だけどね。ただし内村さんと大竹さんは当然ですが三村さんより上回っている力もあるわけだから一つの視点だけで比較は出来ませんけどね。
そういう意味では内村さまぁ~ずの3人に挟まれたゲストMCが能力的に差がありすぎる時もありますが、それでも一般人と比べるとすごい面白い才能を持っているわけです。
ちなみに、漫才やお笑い芸人の面白さって、世間一般的な面白さではないですよね。何というかね湿気があるというか、根暗というか、飲み会で面白い奴的なカラッとした笑いではないですよね。クラスの隅で一人コソコソ面白い事を妄想して笑っている奴的な…。
大体コンビでもメインでネタを考える方は人見知りだったり暗かったりする気がします。松本さん、内村さん、大竹さん、有野さん(浜口さんも考えるそうですが)、又吉さん、岡村さん、小沢さん、もちろん全部がそういう訳ではありませんが…。
小説から少しずれましたが、小説内でも又吉さんのお笑い哲学というか、笑いの芯というか、創作者の思いというか、そういう笑いに対しての真面目な”こだわり”や”主張”が存分に味わえます。私も音楽を創作しているので共感できる部分も多かったです。
才能って厄介ですね。自分でない事を認めてしまったらやっていられません。あると信じるから壁を乗り越えようとします。でも実は自分には才能がないと分かってもいます。誤魔化しているわけです。だけど才能がある人もいてそういう人が大成します。本当に才能があり諦めなかった人が。一部の天才はそんな悩みすら抱かず成しえたりもしますが…
その陰には大量に散った人がいる訳ですが、世の中ってそういう物なんですよね。だけど人生は続く、そういう部分をしっかり描く作品って良いですよね。全然違うけどグレンラガンっていうアニメもヒーローが世界を救った後をリアルにヒーロー自身とヒーローを取り巻く世界の苦悩を描く部分が凄いと思った作品でした。まぁ最後の最後は全部を突き抜けた熱いストーリでしたが…
内容は売れない漫才師たちの青春かな
薄めの小説ですし、読んで損はない作品なので是非読んでもらいたいです。内容は売れない漫才師の主人公と才能がある(みたい)主人公が尊敬している、売れない先輩漫才師との笑い哲学のぶつかり合いの10年間の青春みたいな話ですね。
漫才を文章で表現するって難しいですね。作中に出てくるネタを実際に人がしゃべったり漫才で話したりしたときに面白いかどうかがいまいちピンときませんでした。と思ったら映画化していました。
ちなみに少しだけネタバレするとストーリーにオチがある所は流石だと思いました。終盤に向かって何かあるような思わせぶりな雰囲気がありましたが、まさかあの落ちとはね。やられましたわ。読んだときはあちゃーと思ったけどジワジワ上手い終り方だったのかなと思えてきました。
映画版より小説版を先に読むのがおすすめ!
私は映画版は観ていないし、小説を読み終えるまで何も映画版の情報が入っていないかったので純粋に小説を読めました。映画版は気合が入っているようで評価も高いので見て損はないと思います。が、私は情報を何も入れずに小説版を読むのをオススメします。
理由は、少し狂っているようなエッジがある登場人物や主人公、それを囲む登場人物などを文章を元に最適な人物像を自分で描くことでより物語に没入できると思うからです。
それが本を読む事の能動的な喜びではないかと、普段ほとんど本を読まない人が思ってみたりします。映画は全てが受け身です。想像力を働かせる要素が皆無です。本当に良い作品はまず小説版を楽しめば2度楽しめます。
作品は違うけど『イニシエーション・ラブ』も映画版は微妙でした。確かにあのトリックを何とか形にした力はすごいと思いますが、小説版の方が遥かに驚き楽しめました。
又吉さんの作品は2作目の『劇場』やエッセイ『東京百景』なども評判が良いようですので読んでみたいと思います。また旅猿にも出演しているので再視聴してみます。読んでいただいてありがとうございました。
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